A)織物の幅・長さ不足
- 織物設計ミスによるもの
- 糸張力の過度によるもの・・・縦・横糸の張力が強すぎる場合に発生するもので、糸張力又は、幅出し装置などによる調整が必要になる。
- 糸が湿ったものを使用した場合・・・糸の湿ったものは引っ張りに対して伸びやすく、糸繰り、管巻、製織等の過程で伸ばされ、製織後に収縮し織物が縮むので、
糸は十分乾燥してから使用する。
- 工場内の温湿度の過度によるもの・・・特に、糸は湿度による影響を受けやすく、80%以上湿度がある場合は除湿などの対応策を講じ、
工場内は出来る限り一定の温湿度を保つようにする。おおよそ60~80%まで。
- 杼投げの強すぎによるもの・・・杼投げが強いとシャトルから引き出される横糸は過度に引き伸ばされるため、杼投げは可能な限り弱くする。
- 金銀糸、箔などの収縮によるもの・・・台紙にフィルムなどを使った、伸びに対して影響を受けやすい横糸を使用する場合は、
ヒケ荷は十分注意を要する。織り上がり後に収縮を起こすことがある。
B)耳つり
- 原糸によるもの・・・ナイロン、ポリエステルなど伸縮性のある糸を使ったためにおこるもので耳糸は地糸と同じ種類のものが一番好ましい。
- 張力によるもの・・・経糸準備工程、または製織中に過度の張力がかかった場合に起きる。糸の張力については出来るだけ地糸と同じか、やや強い方が好ましい。
- 耳の構成ミスによるもの・・・耳組織と地組織の違いによるもの、横密度および繊度差によるもの等で組織、密度、横打ち本数、糸の太さについて検討が必要である。
- 織縮身によるもの・・・色々の原因によって耳が縮れた場合発生するもので、ピッキング、横糸張力、組織、糸本数などの調整が必要である。
C)耳幅の不揃い
- 張力によるもの・・・地糸と耳糸、或いは横糸張力の不同によって生ずるもので、経糸張力のバランス、横糸の引き出し張力の調整が必要である。
- 杼投げの強すぎによるもの・・・横糸がシャトルから引き出される時の抵抗は、杼投げが強いほど大きくなるので杼投げは出来る限り弱くする。
- 合糸方法が悪い場合・・・横糸を数本合わせる場合、一本一本の糸張力が均一になるように調節を要する。
- 管交換時によるもの・・・新しい管を替えた時、前の管との張力差が生じて起こるもので、シャトルの調節には十分注意を要する。
D)耳たるみ
- 張力によるもの・・・地糸に対して耳糸が張力不足によって生じるもので、若干耳糸張力を強く保つ方が良い。
- 組織、糸密度の不均一によるもの・・・耳糸の設計ミスによって横密度が入りにくいために生じるもので、地組織を考え、耳組織、密度を検討する。
- 織縮によるもの・・・地と耳の経糸の縮み率の相違によって生じるもので、地と耳の組織のバランスを考える。
- 開口によるもの・・・耳部と地部との開口差によって生じるもので、織り上がり後、耳のゆるみが生じる。開口差のないように調整する。
E)経糸切れ
- 原糸の不良によるもの・・・原材料の悪いもので劣化したもの、カビ、害虫の発生したものを使用した場合。
- 結節不良や糸ムラのあるとき・・・製織中、結び目の解きや糸の節などが、綜絖および筬によって摩擦を受けやすく切断しやすいので、整経、製織前に出来る限り整理をする。
- 経糸巻き不良の時・・・経糸の巻幅は、吊り込み幅より約1割程度広いものが良い。また、吊り込みの中心に経糸の中心が来るように経糸をセットする。
- 密な引き込みを行った場合・・・綜絖、筬に密なる引き込みを行った場合など、経て切れの原因になりやすい。織物に適した綜絖、筬等の引き込みが必要である。
- 経糸張力は織物の性質や使用糸によって変えなければならない。張力が適当でないと完全な杼口を作ることが出来ない為、経て切れを生じやすい。
- 前機(伏せ)装置の調整不良・・・伏せの押さえ過ぎ、押さえ不足による場合。
- 杼口の不完全な時・・・開口量が過小、過大な場合。
- シャトル(杼)に傷がある時・・・シャトルのチップ(先端)が鋭角出ない時、シャトルの先端の金具と木部の接合部が同一平面出ない時、木部部分が傷があるもの。
※ピッカー穴が大きくなると木部の部分がピッカーに当たるため、木部にキズが出来、経糸切れとなる。
ピッカー穴がパッキンを超えるまでにピッカを交換する。
- 綜絖、筬羽が不良の時・・・綜絖の破損や筬羽の曲がりや傷、サビなどにより経糸が引っ掛かるときは綜絖を取り替えるか筬磨きを行う。
- 静電気によるもの・・・綜絖やスレー、シャトル等によって静電気が発生し、開口不良等を起こし経糸切れを生ずる。工場内は適度の温湿度が必要である。
F)横糸切れ
- 原糸によるもの・・・原糸が弱く、糸節が多くまた、のり付け、増量加工などの付け過ぎもあり、乾燥のし過ぎや湿った糸を使用した時、撚りムラ等でもなる。
- 管、管巻不良・・・木管のひずみや表面の傷のあるもの、木管の長い場合。かたく巻き過ぎや太く巻き過ぎ、
トラバース運動の不調による巻きの形状が悪い時、また、結節部分が多く糸端が長い時。
- 杼箱によるもの・・・杼箱にひずみや曲がり、表面が滑らかでない、シャトルの長さが合っていない、スエルの押さえ過ぎなどが考えられる。
- ピッカーによるもの・・・チップの穴が大きくなりピッカーが破損している、ステッキ穴が摩耗しカエリのある場合、ピッカースピンドル穴の油切れなど。
- ステッキによるもの・・・杼投げが強く、ステッキの運動量が大きい時、ステッキの摩耗、ステッキのスプリングが強い場合。
- 筬によるもの・・・耳端でハサミで切ったように横切れする場合、筬羽に傷があるためで筬面の位置を移動するか筬磨きをする。
- シャトルによるもの・・・シャトル寸法が不揃い、管・猫毛・テンション等の調整が悪く解除張力ムラを生じた時。
木管のガタつきや木管の先端と突き当たりの糸口の間隔が狭い時、重量の不揃い、バランスが悪くシャトルが捻じれて反り・曲がりを生じている時。
G)織り段・・・筬打ち時に起きるもので横糸が規定外の密度に織られて出来る段のこと。
- 原糸の太さにより生ずる・・・糸の太細により出来る。
- 経糸、横糸の張力の不適性・・横糸の張力ムラによって生ずることが多く、横糸は長時間管に巻いて放置しないこと。巻いた管は出来るだけ早く使用する。
- 開口量の調整不良・・前機(伏せ)使用時には開口量に差が出ないように調整する。
最大開口時に引き上げられた糸、また、引き上げられない糸がそれぞれ可能な限り同一線上にあるように調整する。
- 湿った糸の使用・・過度の湿った糸の使用は、引っ張りに対して伸びやすいため織段を生じやすい。糸は適度な乾燥をして使用する。
※織段の生じる原因としては、巻き取り装置の不調、経糸の送り出し量のムラ、ピッキングのムラ、筬打ち装置の不調によることが比較的多い。
H)ヒマが開く・・・織幅の全部、または一部分において横糸が粗密になり間隔を生じたものである。
- ビームの扁平、偏芯・・・整経の時円形に近いように巻く。また、ビームの仕掛け時のガタつき、或いは芯の曲がりが無いように注意する。
- 織機の停止・始動の不備・・・織機の停止、始動、または口合わせ動作が正確にわれる様にブレーキ、起動装置のクラッチの調整を確実にしておく。
- 筬、クランクなどの取り付け不良・・・コネクティングロッドピン、リードキャップホルダー等にガタつきが無いように、また、砲金メタルの磨滅が無いように注意する。
- 開口量の差・・・開口時に通糸の高さが不揃いになるため、組織によってはヒマが生じる。また、ジャカード、目板が織物の中心になるように設ける。
- 巻き取り・送り出し装置の調整不良・・・巻き取り・送り出しの各ブレーキは、油の付着がないように常に拭き取り、ヌイの時の巻き取り停止についてもしっかりと調整を行う。
※消極送り出しの場合はロープの材質と巻き数の考慮し、巻き付けに当たってはラッフルに接しないように調整すること。
I)組織段
- 開口時の経糸の張力差によるもので、織前に近い綜絖による開口と、遠い綜絖による開口時に、経糸張力の差がないよう棒刀板等の高さ調整を行う。
- 目板の列数によるもので、目板の列数は出来るだけ少なくとり、前後の綜絖の張力差を少なくする。
- 間丁ローラの上下によるもので、間丁ローラの位置により張力差を生じるもので、その位置は水平を保つように調整する。
- 畔竹の位置不良によるもので、畔竹を固定した場合、または、織前に近づいた時に生じやすい。一般に畔竹の位置は間丁ローラと後方の綜絖の中心よりやや後方が良い。
- 開口量が大きい場合で、経糸張力に大きな差が出来て段が出来る。開口量はできるだけ小さくする。
J)機械段・・・機械の不調により起こるもので、規則的にものと不規則なものがある。
- 織機の回転ムラによるもので、ベルトのスリップ、ゆるみなどによって回転ムラが起き、杼打ちムラ、筬打ちムラが発生し、小さい周期の機械段が生じやすい。
油の侵入防止、或いはベルトのゆるみの修正等が必要である。
- 停止位置の不完全によるもので、起動時の打ち込みが弱く段が発生しやすい。停止位置の整備或いはブレーキ部分の調整が必要である。
- 送り出し・巻き取りの調整不良で起こるもので、歯車の噛み合わせの浅い場合、送り出し・巻き取りの各部分に油が付着していることがある。
- 送り出し・巻き取り装置の調整不良によるもので、タイミング、停止紐の吊り方等の点検が必要である。
- ラチェットヒールとキャッチの送りミスによるもので、ホイールの油切れ、ホイール内部のスプリングの磨滅により巻き取り装置の円滑な廻転が行われない。
規則的な細かい段が生じることがある。
- ホルダー部分のゆるみが原因の場合で、リードキャップ、リードホルダーなど筬打ち部分のゆるみによって段が発生しやすい。
特にガタつき等は他の要素と複合した不規則な段が起きやすい。(織機調整講座_9を参照)
- フィーラーロールの不良によって起こるもので、ロールの軸部の歪みによって服巻ロールとの接触が悪く、巻き取りが円滑に行われない為に不規則な段が発生しやすい。
軸部の芯出しを完全にし、クロスロールとの接触が確実なように調節すること。
- 機拵え等の不備によるために開口運動に不調を生じ機械段を起こしやすい。
※機械段はほとんどが等間隔で定期的なピッチで発生するのが特徴で、不等間隔で不定期段となって生じる場合は、他の複合的な要因と重なっているものが多い。
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